三朝庵(カレーうどん,カツ丼発祥の店)@早稲田 - 高田馬場B級グルメ

三朝庵はカレーうどん・カツ丼発祥の店である。

早稲田大学傍にある。味ではなく記念に訪問してもらいたい。歴史に想いを馳せながら味わおう。

……閉店した。2018年7月31日である。オレが死んでも営業していると勘違いしていた。

早稲田最老舗らしい。

閉店

2018年7月31日に閉店した。閉店の理由は従業員の高齢化に伴う体力の衰えらしい。

2018年8月4日、店の前の貼り紙に気づいた。

三朝庵の閉店の案内

毎度お引き立て頂きありがとうございます

初代、朝次郎以来 早稲田の地で百年以上の永きにわたり営業して参りました

スタッフの高齢化と人手不足により、この度やむなく閉店することといたしました

ごひいき下さいましたお客様には誠に申し訳なくお詫びいたしますと共に永らくご愛顧賜りましたことに心より感謝申し上げます

平成三十年七月三十一日

三朝庵五代目店主敬白

後継者不足に対処するサービスが必要である。確かにウェブサービスで複数見つかった。例えばSynchro Food飲食店・外食事業に特化したM&A、事業譲渡サポートである。そもそもサービスとして良いのか悪いのか知らない。でも、三朝庵は閉店する。知らないのか、知っていても無理なのか、とても悔しい。

カレーうどん発祥の店

三朝庵はカレーうどん発祥の店である。

1904年頃に三朝庵の店主がカレーうどんを発明した。井上宏生『日本人はカレーライスがなぜ好きなのか』(平凡社新書、2000年11月)にその逸話があった。

しかし中目黒の朝松庵もカレーうどん発祥の店を主張しており、1908年に大阪でカレーうどんを売り始めたとしている。席上のメニュー裏には「カレー南ばん カレー丼 の由来」としてその経緯が書かれていた。

1904年頃の三朝庵が発祥の店なのか、1908年の東京そば、今の朝松庵が発祥の店なのか、これ以上は調べようがなかった。

『日本人はカレーライスがなぜ好きなのか』では、朝松庵の二代目角田酉之介氏をカレーうどんではなく、カレー蕎麦の発明者としており、井上岳久『カレーの雑学』(日東書院、2007年2月)にも同様の記載があった。

大阪で朝松庵の二代目角田酉之介氏が売り始めたのは、カレーうどんではなく、カレー蕎麦だったのかもしれない。この件についてもこれ以上は調べようがなかったのだが、以上から推測するに1904年頃の三朝庵でカレーうどんが発明され、1908年の東京そば、今の朝松庵でカレー蕎麦が発明されたのではないだろうか。朝松庵で発明されたのはカレーうどんではなく、カレー蕎麦なのであって、それが誤ってカレーうどん発祥の店として伝わっているのだと思う。カレー南蛮とはカレーうどんなのかカレー蕎麦なのか、その不明瞭さが誤った伝わり方をした原因なのかもしれない。

カツ丼発祥の店

また、三朝庵はカツ丼発祥の店でもある。

カツ丼には、玉子とじカツ丼以外にもソースカツ丼や塩カツ丼、おろしカツ丼などがある。これらカツ丼の元祖は玉子とじカツ丼ではなくソースカツ丼だった。その誕生には諸説ある。

  1. 1913年に高畠増太郎氏が東京の料理発表会で披露し、1917年には同氏経営の洋食屋であるヨーロッパ軒で提供されはじめたとする説
  2. カフェハウスの常連だった中西敬二郎氏が考案し、1921年には同店の店頭にポスターを貼ったとする説

前者はどんぶり探偵団編「ベストオブ丼」(文藝春秋)の説で、後者は、Chinchiko Papalog「ソースカツ丼と和風カツ丼の物語」の説だ。

ヨーロッパ軒もカフェハウスも早稲田だ。私たちのよく知るカツ丼(玉子とじカツ丼)の前に早稲田では既にソースカツ丼が誕生していた。

三朝庵はソースカツ丼ではなく玉子とじカツ丼発祥の店になる。

四代目女将の加藤峯子氏はその誕生を語る。昔はお金持ちでなければ洋食屋に行けない時代で、宴会料理の冷えた残りを煮て出したのが始まりだとか、カツがたまたま余ったとき、もったいないからと、早稲田の学生さんの提案もあって作ってみたのがカツ丼だったんです。続けて、五代目店主の加藤浩志氏である。 三朝庵は卵とじのカツ丼を作った元祖です。宴会用に仕出しで取ったトンカツが余ってしまい、その頃既にあった親子丼や開花丼をヒントに卵でとじたのが始まりです。といった具合だ。

閉店時にはカツ丼について「百年のご愛顧ありがとうございました」の張り紙を出していたらしい。

ちなみに、余談だが、自分が食べた最後のカツ丼は2016年6月26日だったようだ。

三朝庵のカツ丼

ありがとうございました。

カレー南蛮とカレーうどん

カレー南蛮とカレーうどんは麺で区別される。麺が蕎麦の場合はカレー南蛮で、うどんの場合はカレーうどんだ。しかし両者の区別は曖昧になってきており、麺が蕎麦ではなくうどんでもカレー南蛮と呼ぶことがあるらしい。

そして麺がうどんで長ネギを使ったものをカレー南蛮、タマネギを使ったものをカレーうどんとして区別することさえあるようだ。これはそもそもカレー南蛮の「南蛮[なんばん]」とはネギ(長ネギ)を指すため、タマネギを使った料理を南蛮とはやはり言えなかったことによるものだろう。

カレー南蛮の「南蛮」とは?

カレー南蛮の「南蛮」とは長ネギのことである。

大阪の「難波[なんば]」がネギ(長ネギ)の産地だったため、「難波」が転じて「南蛮」になったとする説が有力らしいが、その一方で「南蛮」は「難波」ではなく「南蛮煮」に由来するという見解もある。

大坂や上方には古くから南蛮煮という料理があって、角川古語辞典でも「新撰大阪詞大全」や「浪花聞書」などに「ねぶかにて炊いたものを南蛮煮(なんばんに)(なんばに)と云う」とあって、ネギと南蛮煮の関係がわかる。

途中「ねぶか」とはネギ(長ネギ)のことで、南蛮煮の「南蛮」もやはりネギ(長ネギ)を指すのだ。カレー南蛮の「南蛮」が「難波」「南蛮煮」のいずれに由来するにせよ、「南蛮」がネギ(長ネギ)を指すことに変わりはない。

店舗

営業時間

11:00から17:00まで。売切仕舞。定休日は木曜日。

住所

新宿区馬場下町62

馬場下町交差点の北東角。

参考

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作者:馬場飯