鰻・うなぎ・ウナギ

ウナギ目の魚。 全長40~50センチメートルが普通だが、1メートルに達するものがある。 体は細長い円筒形で、尾部は側扁し、背びれ・尾びれ・尻びれは連なる。 体色は背面が暗い青褐色、腹面は白色。 鱗(うろこ)は皮下にうまり、皮膚は粘液が多い。 成魚は川や湖沼にすむが、産卵・孵化(ふか)は海で行われる。 孵化した仔魚(しぎよ)は透明で細長く、柳葉状のレプトセファルスに成長し、 変態してシラスウナギと呼ばれる稚魚となり、河川に上って成魚となる。 養殖も盛ん。 かば焼きとして美味。 日本・台湾・中国からベトナム・フィリピンの北部にかけて分布。

天然鰻と養殖鰻

天然鰻と養殖鰻のどちらが美味しいのか。 私は天然鰻を食べたことがありません。 どちらが美味しかったのかを書くことなんてできません。 しかし、天然うなぎと養殖うなぎの違いを、できるだけ調べてみました。

天然うなぎと養殖うなぎの見分け方

まずは天然うなぎと養殖うなぎの見分け方です。 高価な天然鰻を注文する際には、確実に見分けて、納得してから食べたいものです。 ところが、見分けることがとても困難なのです。 特に調理後の鰻は見分けることができません。 しかし、養殖ウナギと確実に見分けることができる時期の天然ウナギがいます。 下りウナギです。

下りウナギとは産卵時期を迎えたウナギです。 他の時期のウナギと比べて外観上、特徴があります。 皮が蒼黒色で厚く、側面や腹部が黄金色を帯びています。 養殖ウナギは産卵をしません。 そのため、養殖ウナギがこうした特徴をもつことはありません。

天然鰻の旬は秋です。 そして、この秋のウナギが下りウナギです。 下りウナギは断食します。 この断食を契機にして、身体の組成の再編成がおこなわれます。 筋肉に脂質が蓄積され、生殖巣が肥大化します。 脂がのったこの時期の天然ウナギこそ、最も美味しい天然鰻だといえます。

幸いにもこの時期の天然ウナギが養殖ウナギとは異なる特徴をもっているのです。

大アタリ狙いの天然うなぎ、ハズレの少ない養殖うなぎ

それでは、天然鰻と養殖鰻のどちらが美味しいのか。

天然鰻はアタリハズレが大きいといえます。 ウナギが育った環境、そのなかでも重要な要素としては餌と水の二つが挙げられます。 これらの善し悪しがそのまま鰻の味に反映されやすいのです。 これは何よりもウナギの生命力が原因です。 どんな餌でも食べます。 餌として相応しくないものを食べても、ウナギはなかなか死にません。 また、どんなに汚ない水のなかでも、ウナギはなかなか死にません。 こうしてウナギは、通常は死んでしまうような環境のなかでも生き延びます。 そして、我々の口に入ることがあるのです。

これに対して、養殖ウナギは管理された環境のなかで飼育されています。 基本的には一定の水準を保つことができます。 しかし、一定の水準に達したウナギは出荷されます。 それ以上の努力はなされません。 多大なコストを費やしてまで、より最高の状態に近いウナギを養殖する合理的な理由が普通はないからです。 また、人為的に養殖されるということは、養殖業者の経営方針に左右されるともいえます。 一定の水準にさえ満たないウナギが大量に養殖される可能性が、少ないとはいえ、ないとはいえません。 しかし、原則として養殖うなぎは一定の質を保たれているといえます。

また、うなぎには旬があります。 真夏の土用の丑の日ではありません。 鰻の旬は、鰻に脂がのりきった下りウナギの季節、秋なのです。 この時期を外れた天然うなぎは味が落ちることになります。 下りウナギ以外の天然うなぎは提供しないという店さえあります。 ところが、養殖うなぎに旬はありません。 下りウナギのような特別に美味しい時期がないのです。 養殖ウナギは出荷に合わせて前述のように管理された環境のなかで飼育されているからです。

さらに、うなぎ自体の質とは直接関係がないのですが、養殖鰻と比べて、天然鰻の場合、その味は職人の腕に左右されやすくなります。 一定の環境で育てられた養殖うなぎと異なり、多様な環境で育った天然うなぎは一匹々々が個性的なため、その調理方法も個別のうなぎに合わせなければならないからです。 そのため、天然鰻の味は養殖鰻と比べて職人の腕に左右されやすくなります。

天然うなぎも養殖うなぎも味のランクづけ

このように天然鰻はその質の多様性に特徴があり、昔から味のランクづけがされてきました。

天然うなぎの味のランクとして[関東地方]まだ汚染の進んでいない昭和初期頃は「沼、池より川が上物、同じ川でも急流の方が上物、本流より支流が上物」とされ、その他に秋に捕れる「下り鰻」、河口の海の餌で育った「海鰻」「シャコうなぎ」は別格で上物とされました。 それから、金沢八景、品川付近から利根川までの間で捕れるうなぎを「江戸前」と呼びそれ以外を「旅の鰻」と呼んで「江戸前」を上物としてきました。 入荷の時期はうなぎの漁のしかたや、運送の都合上、河川によって違うため下記を参考にしてください。

浜名湖産は純粋な天然うなぎと養鰻池から逃げて育った天然とを区別するために秋に捕れる「下り鰻」しか当店では扱いません。 これは養殖鰻は産卵ができない体質のため、産卵に向かうための「下り」という行動はしないために、この時期でしか区別が難しいためです。

このランクづけには根拠があります。

「沼、池より川」「同じ川でも急流」というのは、それだけ鰻の活動量が多くなり、身が引締まるからです。 「下り鰻」というのは、産卵に向かって川を下る鰻のことですが、この時期の鰻が最も脂がのった鰻になるからです。 「海鰻」「シャコうなぎ」は、その河口という棲息地域が重要であり、多様な餌を摂取できるからです。 「旅の鰻」より「江戸前」というのは、当時の交通事情が影響したのでしょう。より新鮮な鰻をという理由だと思われます。

ところが、このようなランクづけは天然鰻に限ったものではありません。 養殖鰻のなかにも「ブランド鰻」とか「幻の鰻」などと呼ばれるものがでてきました。

共水マルトク鰻とは?養殖鰻の最高級品!もっとも天然鰻に近い味をしています。 近年、養殖鰻もブランド化しています。 メディア等で紹介されご存知の方も多いと思いますが、坂東太郎・スーパー鰻・江戸前鰻・等、数多くのブランド鰻が出回っています。

これらの養殖鰻は、餌や水をはじめとした環境を徹底的に管理されて育てられた鰻です。 アタリハズレの多い天然鰻のなかでも大アタリの天然鰻に近い味を目標に研究されてきました。 養殖鰻のエリートといったところでしょうか。

天然うなぎと養殖うなぎ、美味しいのはどっち?

このように天然鰻も養殖鰻も、それぞれがランクづけされ、差異化されているのが現状です。 天然鰻と養殖鰻のどちらが美味しいかなのではなく、どの天然鰻、またどの養殖鰻が美味しいのかということなのかもしれません。 さらにいえば、結局、天然鰻か養殖鰻かという選択肢は、それ自体が特別に重要なのではなく、他にも多数ある選択肢、たとえば、活鰻か冷凍鰻か、ジャポニカ種かアンギラ種か、国産か外国産かという選択肢のなかの一つにすぎないということなのかもしれません。

確かに天然鰻と養殖鰻は違います。 この違いの中身は、既に確認してきました。 しかし、最も大事なのは、この知識から天然鰻と養殖鰻のどちらがより美味しいのかを結論づけることではないのかもしれません。 私もどちらか一方の鰻だけを選択することができません。 むしろ大切なのは、この知識を、自分が鰻を美味しくいただくための方便とすることなんだと思います。

ウナギの生態

ウナギの一生は海からはじまります。 海で孵化するのです。 孵化した仔魚は、透明で細長い、柳葉状のレプトセファラスに成長します。 ウナギとは似ても似つかない形状です。 このレプトセファラスは、海流に流され、故郷の沿岸に戻りますが、 この間に変態して、我々の知るウナギの形態に近いシラスウナギになります。

シラスウナギは漁の対象とされ、養殖業者にまわされます。 レプトセファラスからの養殖が成功していないため、養殖鰻はシラスウナギから育てられるのです。 そのため、シラスウナギの漁獲量が重要になり、このシラスウナギの価格こそ、鰻の時価に最も影響を与える要素となります。

このシラスウナギは、さらにクロッコダッコなどと名前を変えていき、 そして、ある程度成長したものが川をのぼり、我々のよく知るウナギになります。

居場所を決めたウナギは生命力の強い生きもので、たとえ劣悪な環境でも、あらゆる餌を食べて生き延びるのですが、 逆にいえば、このようにウナギの生命力が強いため、劣悪な環境でも死なずに生き延び、その結果、天然鰻の当たり外れは大きくなります。

産卵時期を迎えたウナギは、今度は川を下りはじめます。この時期のウナギは下りウナギと呼ばれます。 下りウナギの外観上の特徴は次のとおりです。

成熟年齢に達した親魚は、9月下旬ごろから10月下旬ごろになると、体の色素が蒼黒色となり、側面はうっすらした黄金色の光沢が出てくる。 腹部は薄紅色を呈して、胸鰭(むなびれ)の基部は金箔(きんぱく)色を呈する。

養殖鰻は産卵をしないのでこうした身体上の特徴が現れません。そのため、これらの特徴が天然鰻と養殖鰻を見分けるポイントになります。 しかし、逆にいえば、この時期以外では、天然鰻と養殖鰻を見分けることができないともいえます。 また、この下りウナギは次のような特徴をもっています。

下り鰻は自ら断食するが、体が衰弱する様子は見当たらない。 ふつう魚がエサ不足で飢餓(きが)状態になると肝臓をはじめ、主要な内臓器官はみるみる退縮して衰弱するが、 断食した鰻には、こんな症状は現われない。

そればかりか、鰻は筋肉に脂質が蓄積され、生殖巣にいたっては成熟が進んで、肥大しはじめる。 断食を機に、体の組成の再編成がおこなわれ、長い旅行と産卵の準備が着々と整えられるわけである。

下りウナギが美味しいのは、この時期がウナギの一生で最も脂ののっている時期だからなのです。

こうして川を下ったウナギは、最後に海で産卵して、その一生を終えます。

鰻に関する雑記

下りウナギ

下りウナギとは産卵時期を迎えたウナギです。 9月から10月頃、産卵時期を迎えたウナギは川を下り、海を目指します。 ウナギの産卵場所は海なのです。 他の時期のウナギと比べて外観上、特徴があります。 皮が蒼黒色で厚く、側面や腹部が黄金色を帯びています。

下りウナギは断食します。 この断食を契機にして、身体の組成の再編成がおこなわれます。 筋肉に脂質が蓄積され、生殖巣が肥大化します。

鰻の調理法

関東と関西では調理法が違います。 関東では、鰻を裂きして焼いた後、蒸してから、今度はタレをつけて焼きます。 関西では、鰻を裂きして焼いた後、蒸さずにそのまま、タレをつけて焼きます。 地焼き(堅焼き)といいます。 関東で鰻を腹から裂かず、背から裂くのは、腹を裂くというのが切腹を連想させるかららしいです。

鰻のタレ

濃口醤油、味醂、酒、砂糖。

  1. 濃口醤油と味醂を1:1で混ぜます。
  2. 加熱して、酒と砂糖を適量混ぜます。

濃口醤油の比率を大きくすれば辛め、小さくすれば甘めになります。

ご参考

坂東太郎

坂東太郎は利根川の異名です。 高級養鰻「坂東太郎」の名前の由来はここにあると思います。 坂東太郎は 下利根川の天然鰻に近づけるため利根川でとれた小魚を食べさせて育てています。小骨が少なくてクセのない味です。 坂東太郎は餌に特別の関心を払った養鰻であるようです。 養鰻は魚の切り身やミミズなどを餌にする場合も多いようなのですが、 坂東太郎は利根川の天然鰻と同じ食生活をさせることによって、天然鰻に近づけているのですね。

さて、この坂東太郎の食感なのですが、多分、 「「美味しい!」が好き」が坂東太郎独特の食感を正確に伝えています。 川魚の味を感じることができたのだそうです。 何だか読んだ後に口惜しくなりました。 そうだったのか。言われてみれば、そうだったかもしれない。 もう一度、食べに行って、自分で確認したいなという感じです。 白焼だったら感じることができたかもしれませんね。

また、その知名度の高さからか、「ばんどう太郎商標審決取消請求事件」といった商標をめぐる訴訟もあったようです。

備長炭は美味く、ガスコンロは不味いか?

鰻は、ガスコンロで焼くよりも備長炭[びんちょうたん]で焼いたほうが美味しいのでしょうか。

うなぎやさんや焼き鳥やさんで、木の板に墨痕も鮮やかな「紀州備長炭使用」の看板を見かけることも多くなりました。 今やおいしい炭として「紀州備長炭」は有名です。 ではなぜ、おいしいのでしょうか。備長炭独特のソフトな炎と、まろやかな温度が、タンパク質の分解を防ぎ、肉を美味しくするためのアミノ酸を形成。さらに遠赤外線効果が食欲を誘うグルタミン酸を増加させます。 というわけで、うなぎ、焼き鳥、魚、肉などの焼き物料理には欠かせない燃料になっているのです。 また火力が強いうえ、火もちもよく、うちわ1本で火加減の微妙な調整が思うままにできるのも、料理人に愛用される理由なのです。

火がポイントであるようです。 しかし、それならばコンロでもよいのではないでしょうか。 備長炭の達人がいるように、コンロの達人がいても不思議はありません。

しかし、鰻は、直接、炭の煙で燻されます。 つまり、炭は鰻を焼くだけではなく、燻るためにも使われるのです。 この点に何か秘密があるのでしょうか。 ところが、炭独特の匂いが鰻につくことは欠点とされ、事実、備長炭は他の炭に比べて、鰻を燻るときに匂いが移りにくく、その点が長所とされています。 そもそもコンロであれば、炭独特の匂いが鰻につくことなど考えられません。

結局のところ、備長炭という名前が、そこから受ける美味しいというイメージが、何よりも鰻を美味しくしてくれているのかもしれません。

土用の丑の日

土用の丑の日に鰻を食べるという習慣は、江戸時代からはじまったようです。 しかし、その由来には諸説があります。 以下では、大田蜀山人か平賀源内が鰻屋に頼まれて宣伝したのがはじまりという説が紹介されていました。

大田蜀山人は平素か鰻が好きで、当時江戸時代の鰻屋の頼みで、店の繁盛方策を考えた。 「土用鰻は効果があり、特に丑の日の日には食当たりしないという意味のことを宣伝させた」これが始まりだという説。 また一説に、当時有名な平賀源内が、鰻屋の依頼で看板を書いたときが、 たまたま土用の丑の日だったので「本日土用の丑の日」と達筆で大書きして店頭に掲げたところ、 有名人であり博学の先生が書いたものなのだから、人々は丑の日、鰻、栄養に深い意味があるものと考え、これが大評判となり、先客万来の大盛況。 他の鰻屋も負け時と、これを真似るようになったと伝えられる説。

作者:馬場飯
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